FRONTIER JOURNEYとは

FRONTIER JOURNEYでは、サンフロンティアに関わる社内外で活躍するさまざまな「人」に焦点を当て、
仕事への想いや人生哲学を深くお聞きし、私たちが大切にしている「利他の心」や新しい領域にチャレンジし続ける「フロンティア精神」についてお伝えしています。
人々の多彩な物語をお楽しみください。

Vol. 047

すべての事象を解析して数式化する。それが我が社のミッション

株式会社Solafune 代表取締役 CEO
上地 練Ren Uechi

2023年11月24日

「Hack The Planet.」。
株式会社Solafuneの代表取締役CEO、上地練氏が着るTシャツに書かれたこの文字は、「地球上で起こるあらゆることを、解析(ハック)する」という意味らしい。現在、人工衛星から読み取れるデータを解析するアルゴリズムを開発し、さまざまな機関や企業にサービスとして提供しているSolafune。夜の渋谷で行われた撮影では、漆黒の夜空と雑踏のなかでも、Tシャツの文字がくっきりと映えた。まるで「この星に解析できないものなどない」と不敵に宣言するかのように――。
2023年、サンフロンティアが旗振り役となり、複数のベンチャーキャピタルなどと連携しながら、スタートアップを支援する「START-UP FRONTIER TOKYO Project」を開催。優秀な企業には事業を展開するためのオフィスを提供するコンテストで、見事1位に輝いたのがSolafuneであり、上地氏はビジネス誌・Forbes JAPANの『「世界を変える30歳未満」120人』という特集で取り上げられるほど注目される、若手実業家の一人である。
「すべてを解き明かす」そんな野望を掲げる上地氏の頭の中は一体どのようになっているのか?新世代の実業家の素顔に迫った。

沖縄県出身、26歳。幼少期は「普通。いたって普通の子どもでした」

「人工衛星を使って、惑星で起こるあらゆることを解析したい」と話す上地氏は、1997年沖縄県生まれで、今年26歳。若くしてスケールの大きなミッションを掲げる彼はどのような幼少期を過ごしたのだろうか。

「普通ですよ。18年間沖縄で暮らしていて、地元の高校の普通科に通っていました。両親は共に4年制の大学を出ていないですし、放任主義でしたから特別な教育を受けたわけでもない。長男だから上のきょうだいに影響されたこともありません。どこにでもいる子どもでした」

そうはにかむ上地氏。ただ、幼少期から数学や物理などサイエンスがとにかく大好きだった。これらには2種類の面白さがあるという。1つは学問としての面白さで、絶対的な「解」を持ち、それに対しては“権力や想い、恣意的な力が一切介入できない”という点だ。もう1つは、いわゆる世界の偉人とされ、今なお語り継がれる人物たちは数学者や物理学者が多い点だという。

「ピタゴラスにダ・ヴィンチ、ガリレオやアインシュタインもそうです。数学や物理は学問として普遍的で、それを確立した人たちの考え方や発見、発明した技術は今でも応用されている。歴史を紐解くと、人類の、宇宙の基礎の学問といえる。そういったものが私にとっては面白いですし、coolだと思います」

自分の中の「面白い」「cool」を評価軸に、それを追求する上地氏は、高校を卒業するとアメリカのカリフォルニア大学バークレー校に進学する。「世界大学ランキング」で常に上位にランクインするカリフォルニアの州立大学で、過去にノーベル賞受賞者を100人以上輩出し、著名な卒業生にはAppleの共同創業者、スティーブ・ウォズニアックや、Google社長兼CEOであるエリック・シュミットなどがいる。
上地氏が本学を目指したのは、そうした傑物を多数輩出していること、天文学や物理学で非常に有名であること、そしてシリコンバレーにあるのでスタートアップのようなカルチャーも進んでいたため。やはり「面白そう」「cool」という点がポイントだった。

さらに同大学を目指した理由がもう1つあった。
高校時代、数学や物理が好きだった上地氏が起業に興味を持ち始めたのもこの頃だったが、日本を代表するある起業家の出身校だと知ったことだ。たまたま手に取ったこの経営者の回顧録に触発されたのだ。

「起業家とはどういう人なのかと、興味があってたまたま読んだ本でした。彼は地元の高校を中退してアメリカの高校に通い、それもすぐに飛び級をしてカリフォルニア大学バークレー校に進学しているんです。これを真似しようと考えて、私も同校を目指しました」

上地氏は「Applied Mathematics」という学部の応用数学科に入学。ここで「世界中で起きている物理現象を、数式でモデル化する」という学問を専攻する。

世の中の事象を数式化する際、内容によっては膨大な時間がかかるそうだが、昨今のAIの活躍によりこの分野は目覚ましく進歩したという。人が決めたルールのもとAIが数式をつくり出し、「このユーザーの行動はこういう数式で表せる」といったことがわかる。
それにより、例えば広告を出す効果的なタイミングがわかりマーケティングに利用できる。データと解析技術があれば、世の中で起こることは帰納的にモデリング可能だと上地氏は言う。その際にポイントとなるのは、まず事象をセンシングするというプロセスだ。

「では一番マクロなセンサーとは何だろう?と考えたときに、人工衛星だという発想にいたるわけです。人工衛星でとったデータを解析するような技術を普及させれば、世の中で起こることは概ね数式化できるのではないかという理屈です。それで今の事業をスタートしました」

人工衛星が解析したデータをコンペ形式でサービス化。新しいビジネス手法で“面白い” “cool”を追求

Solafuneは、衛星データや地理空間データを解析してオンラインで公開し、エンジニアやサイエンティストが集まり競い合うコンペシステムを導入。エンジニアはアルゴリズムを開発し、優秀なアルゴリズムをSolafuneが収集し、社会に実装していくという仕組みである。
この手法は、現在ではGoogleに買収されたKaggleという企業のプラットフォームを応用している。
「Kaggleと人工衛星を合体させて、エンジニアが挑戦したくなるような工夫をかけ合わせたら、世界中から知見が集まる仕組みがつくれた」と言う上地氏。そのアセットを持って、政府や行政、企業に売ることで収益を得ている。

コンペシステムというビジネスモデルに対して“鼻が効いた”理由の1つは、「高校3年時まで打ち込んだ野球にあるのではないか」と本人は分析する。

「私の高校は部活が盛んな学校で、部員が100人程いる野球部に所属していました。沖縄県は特に『メジャーな部活で活躍すると目立つ』というわかりやすいカルチャーがあります。それなら日本で一番マーケットの大きい野球で活躍するのが面白いだろう、というモチベーションでやっていました。人前に出るのが得意な少年ではありましたね(笑)」

物事に取り組むとき、基本的には「目標は一番になること」または「ユニークで、自分たちしかやっていないこと」を念頭に置くという上地氏。数学や物理学を極めた研究者タイプへの憧れを持ちつつも、一方ではメジャースポーツである野球に打ち込んだ。いわば打算的な計算に基づき「人々が何を求めているのか」「何が受けるのか」を読み取りつつ、注目を浴びるということに対して直感的な嗅覚も発揮する。そうしたハイブリッドな能力を、彼は学生時代に育んだのだろう。

「今スタートアップをやるなら、何が注目されている領域であるかを見抜かないといけない。そういう次に来そうな技術や長期のトレンドは何となく予測はできますね。あとは『このポジションに行ったらこうなりそう』というようなものは予想がつくし、人へのアテンションの取り方、評価されそうなポイントなども想像できます」

いわゆる世渡り上手というのだろうか、上地氏の中にセンサーのようなものがあり、ビジネスにおける解を見つけ出していく。
では、例えばこのまますべての事象を解析したり数式で表せたりしたとして、一体どのような世の中になっていくのか。SDGsや環境問題への貢献を考えているのだろうか。

「実は、解析データの先にある『何ができるか』については、私はあまり考えていないんです。自分たちはとにかく『解明すること』に集中するので、その続きは他の方にやってもらえたらいいと思っている。例えば環境問題の1つ、『温室効果ガス削減』であれば、我々は人工衛星で大気中の濃度を解析し、それを公開するので、実際に削減するための技術の開発はより優れた技術者さんに委ねる。林業なら森林伐採を防ぐ事業を行う方が現れるかもしれないですし、酪農業なら品種改良してゲップをしない牛を産むなど、温室効果ガスを減らすためのさまざまな技術が生まれるかもしれない。『いかに多くの人に参加してもらえるか』『拡張する仕組みをつくれるか』が重要だと考えていて、あらゆる分野で解析を行うことで、イノベーションが起こる可能性を広げていく。そのほうがよりエクスポネンシャルだと思います」

エクスポネンシャル(exponential)とは「指数関数的」という意味。 指数関数のグラフが急上昇するカーブを描くように、飛躍的に発展する企業のメカニズムやテクノロジーを説明する際に用いられる考え方である。
有益なデータを提供することで、より多くの人にソリューションを生み出してもらいたいと願う上地氏。近年特に強大化している自然災害についても、予測精度を高め、対策に役立てたりするために地球のさまざまな事象を解析したデータの提供を考えている。

他の惑星にも法人をつくって、宇宙全体にサービスを提供したい

若いエネルギーを燃やし尽くして猪突猛進しているように見える上地氏。

「いやいや、私もサボるときはサボりますよ(笑)。100日間ひたすらずっと作業している毎日と、1日しか働かないけど一発ドカンと大きな仕事を決めて、あとの99日は仕組みに任せて休む日々があるとしたら、私は後者がいいですね。作業と仕事は分けて考えています。休みの日はアニメや映画、本を読むといった普通の楽しみ方。野球はやっていたけど、基本はインドア派です」

自分のことを「妄想屋」と称する上地氏。「何か大きなことをやってみたい」という彼は、まだ見たことのない世界や見たことのない技術に出会って、そこから新しいイメージや技術が生みだすことを希求している。
例えばSFの映画やアニメで描かれているような世界だ。

「事業で大成功した人が、ロケットを作って宇宙を目指すというサクセスストーリーがありますよね。でも私はそこを目指そうという気はないんです。宇宙にヒトやモノを送る輸送系の事業は面白いと思うのですが、ロケット開発の部分に私が今から10年費やすのは少し違うかなと。何か1つのものを極めるよりは、せっかちな性格なので、とにかくいろいろなことをやりたい」

そんな上地氏やSolafuneが、5年後、10年後にどういう姿になっているのだろうか。
具体的な目標を聞いた。

「会社のミッションが『Hack The Planet.』なので、地球だけではなく月や火星などの他の惑星も含めて解き明かしたい。人類が火星に行って探査するときには絶対に人工衛星が上がると思うので、そのときは我々のプラットフォームが使われる世界をつくりたいと思っています。そしてその先に、例えば月や火星に法人がつくれるものだったらつくりたいです。今の地球は異なる国や人種同士のしがらみが多く、それが宇宙産業拡大の足枷になったりもしています。地球という惑星の外からサービス提供を実現することで、そういったしがらみや制約を超えることができるのではないかと思っています。もっと言えば、宇宙人とどこかの惑星で出会ったときに、『そのサービスをうちの星でも使いたい』って言ってもらいたい。半分は冗談ですが、半分は本気です(笑)」

まるでSFの世界。だが上地氏のまっすぐなまなざしを見ていると、他の誰かが言ったら荒唐無稽に聞こえることも、実現しそうな気がしてくる。
沖縄の大自然に抱かれて育った彼に「たまにはデジタルから離れて自然の中でデトックスしたいのでは?」と問いかけると、「私にとってはネットサーフィンをすることも癒しの時間。自然だからデジタルだからと分けて捉えることはない」と断言した。まさに新人類。従来世代には思いつきもしない方法で、上地氏はこれからも地平を切り開いていくに違いない。

Next Frontier

FRONTIER JOURNEYに参加していただいた
ゲストが掲げる次のビジョン

“何か面白いことをしたい”。
今はどこにもない「次の面白い」を求め続ける
編集後記

「大学で学んだこと以上に『自分で立てた仮説が正しかった』という経験を得たことが大きかった。」上地氏なら、自ら掲げた壮大なミッション「Hack The Planet.」を達成するのではないか・・・そう思わせてくれた話をご紹介します。
「ごく普通の高校生がカリフォルニア大学バークレー校に入学するのは本当に難しいのか?という疑問が浮かんた。そこで大学の制度や受験の種類、定員、試験の傾向など入学のための要件を徹底的に解析し、それをもとに筋道を立てました。その結果、普通の高校生が合格できた。行動に移した結果、合格できた。私にとっての成功体験でしたし、『自分を信じよう』と思える出来事でした」
人生における大まかな方針を「面白い」「cool」といった気持ちや直感で定め、成し遂げるためのプロセスは緻密かつロジカルに計画し、実際に行動するのが上地氏のやり方でした。取材中、彼の頭の中で右脳と左脳が交差して化学反応を起こしている図が目に浮かび笑みが消えませんでした。
「Hack The Planet.」――世の中のすべての事象を数式化する。すべてを解明する。
次に彼が何を成し遂げてくれるのか。期待せずにはいられません。

サンフロンティアでは今後も「START-UP FRONTIER TOKYO」やセットアップオフィスを通して、スタートアップの成長を後押しするための取り組みを加速化していきます。

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東京を世界一スタートアップしやすい都市へ。|START-UP FRONTIER TOKYO (startup-frontier.tokyo)

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